「土地の広さは限られているが、できるだけ広々とした家を建てたい…」

こんな思いに応えられるのが、注文住宅の地下室です。地下室を設置すれば制限のある土地を最大限に有効活用し、ゆとりを持たせた間取りの住宅を建築できます。

本記事では、注文住宅の地下室の種類や導入で得られるメリット、留意点を解説します。活用の実例も紹介していますので、注文住宅に地下室の導入を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。

注文住宅の地下室の種類

注文住宅の地下室の種類

注文住宅においての地下室は、以下の3種類に分かれます。

  • 全地下
  • 半地下
  • ドライエリアタイプ

それぞれどのような特徴があるか、見ていきましょう。

全地下

注文住宅の地下室 全地下タイプ

地下室全体が地盤面より下にあり、空間のすべてが地中に埋まっているつくりが、全地下タイプです。地下室内が地上からまったく見えないため、プライバシーが守られます。秘密基地のような空間を演出したい場合も、このタイプが向いているでしょう。

防音性、遮音性、温度の安定性が高い特徴から、全地下タイプは以下のような用途にも向いています。

  • シアタールーム
  • 音楽スタジオ
  • ワインセラー

半地下

注文住宅の地下室 半地下タイプ

半地下タイプとは、空間の一部が地盤面より下にあり、残りの部分は地上に出ているつくりの地下室です。土地に傾斜や段差がある場合に、形状を活かした間取りで作られることが多いです。

全地下タイプと比べると、地下室でも明るく風通しのよい空間が作れます。そのため、リビングなどの居住空間にも向いています。

ドライエリアタイプ

注文住宅の地下室 ドライエリアタイプ

ドライエリアとは、地下室の周囲の地面を掘り建物との間に設けた、外部とつながる空間のことです。地下室をリビングや寝室など居住空間として活用する場合に、自然光を取り入れて風通しを良くできるメリットがあります。

ドライエリアがあると、地上と地下の温度差が減るため、結露対策になります。しかし、夏は涼しく冬は暖かい、地下室ならではのメリットを消してしまう点がデメリットです。

また、地下室の本来の強みである防音性・遮音性が下がる、浸水リスクがあるため排水ポンプが必要になるなどの懸念事項もあります。

インターネット上で「地下室にドライエリアは必須」といった情報を見かけることもありますが、鵜呑みにして安直に選択するのは避けるべきです。ドライエリアにはメリットとデメリットの両方があるため、あくまで選択肢の一つとして考えましょう

注文住宅に地下室を設置するメリット

地下室を注文住宅に設置すると、以下のようなメリットが得られます。

  • 限られた土地を最大限活用できる
  • 年間を通じて温度差が小さい
  • 防音性・遮音性が高いため気兼ねなく音を出せる

それぞれ詳しく説明しますので、間取りを検討する際の参考にしてください。

限られた土地を最大限活用できる

制限のある土地を最大限に活用して注文住宅を建てられる点が、地下室のメリットです。

とくに首都圏で多く見られる以下のような土地に、地下室の設置が向いています。

▼地下室に向いている土地

  • 建築できる敷地面積が限られている
  • 敷地面積は広いものの建ぺい率(※1)が低く建物の広さが制限される
  • 斜線制限(※2)により高さが制限される

※1 敷地面積に対する建築面積の割合
※2 道路沿いの建物において、道路側に面した建物部分に対して設けられる高さの制限

同じ敷地面積でも、地下室によって階数を増やすことで、ゆとりのある間取りにできます

また、以下のようなケースも、地下室の設置で問題を解決できる可能性があります。

  • 斜線制限により地上の3階建てが難しい
  • 地上の階数を増やしても、斜線制限によって天井高が低くなってしまう

地下室は斜線制限の影響を受けず天井高を高くできるため、ゴルフ練習やダンススタジオなどの用途にも向いています。

年間を通じて温度差が小さい

地下室は年間を通じて、温度差が小さい空間です。外気温の影響を受けにくいため、夏は涼しく冬は暖かい空間となります。

首都圏でも夏は30℃以上、冬は10℃以下が続く日はありますが、地下室なら快適に過ごせるでしょう。

以下は、山川設計が設計した地下付きの実験住宅で、年間を通じた温度(室内)と気温(屋外)の変動を計測したものです。

地下付きの実験住宅で、年間を通じた温度(室内)と気温(屋外)の変動の計測値

室内温度は、年間を通じて13〜25℃と安定しています。外気温が低い場合は適温を保つために暖房運転が必要な日が出てくるかもしれませんが、総じてエアコンの稼働率は地上階と比べて圧倒的に下がるでしょう。

防音性・遮音性が高いため気兼ねなく音を出せる

窓を設けない全地下タイプの地下室は、防音性と遮音性に優れていることもメリットの一つです。

全地下タイプの場合、部屋全体が地面に囲まれているため、防音性や遮音性が高まります。音が外に漏れる心配が少なく、周囲を気にせずに楽器の演奏やカラオケなどを楽しめるでしょう。

加えて外部から音が聞こえてくる心配もないため、在宅ワークなどで集中したい場合にもメリットがあります。

注文住宅に地下室を設置する際の留意点

地下室を注文住宅に設置する際に留意したい点は、以下のとおりです。

  • 湿気対策をする必要がある
  • 地下室の設計が得意な業者に依頼する

留意するべき事項を把握し、地下室を快適な空間にしましょう。

湿気対策をする必要がある

注文住宅に地下室を設置する際、湿気対策が必要な点に留意しましょう。地下室は一年をとおして温度の変動が小さいものの、湿気対策しなければ、梅雨時期に湿度が高くなりやすい特徴があります。

以下は、山川設計が設計した地下付きの実験住宅における、夏季の湿度変動をグラフ化したものです。あえて階段部と地下階に断熱材を用いず、湿気対策をしないとどうなるのか検証しました。

地下付きの実験住宅における、夏季の湿度変動のグラフ

一般的に快適な湿度は40〜60%といわれていますが、地下階は夏季の大部分で60%を超えていることがわかります。

ただし、以下のように対策すれば、夏季の湿度の高さは大きな懸念事項になりません。

壁面構成・躯体に防水層を設ける
・透湿係数の小さい材料(ウレタンフォームなど)の断熱材を用いる
換気制御・夏季には積極的に換気しない
(外気や1階の高い湿度を引き込み、逆に室内の湿度を上げるため)
・全熱交換式の熱交換器を用いる
(安価な方法としてサーキュレーターの設置でも効果的)
湿度制御・居住部には除湿機能付きのエアコンを設置する
・収納部分も広さがある場合はエアコンや除湿機を設置する

「壁面構成」や「換気制御」で対策したとしても、直接の除湿は必須です。梅雨時期や建設当初は、連続してエアコンを除湿運転する必要があります。

地下室の設計が得意な業者に依頼する

地下室を得意としている業者に依頼できるかどうかも、重要な要素の一つです。

注文住宅に地下室を作る際は前述した湿気対策など、さまざまなノウハウが必要となります。自宅に地下室を設置する間取りの実例は少なく、施工実績がない業者も存在します。

その点、豊富な施工実績がある業者なら、土地の状態や施主様の希望に合った提案が可能です。

ホームページやSNSで公開されている施工実例を確認し、地下室の実績が豊富な業者へ相談するのがおすすめです。

注文住宅の地下室の活用実例【山川設計の実例】

注文住宅で地下室を活用している実例を紹介します。

実例を参考に、自宅でどのように地下室を活用したいか、イメージを膨らませてみましょう。

実例1.地下室をゴルフやカラオケなどの趣味の空間に

“家時間”が楽しい地下室のある家の地下室への入り口がある廊下

自宅が楽しく過ごせる空間になるように、さまざまな機能を備えた間取りを実現するため、地下室を作りました。地下室への入り口がある廊下は、白と黒の大胆な配色で遊び心をかき立てるおしゃれなデザインになるようこだわっています。

“家時間”が楽しい地下室のある家のゴルフ練習ルーム
“家時間”が楽しい地下室のある家のプレイルーム

地下室には、ゲストと楽しめるゴルフ練習ルームと、麻雀卓・カラオケセットのあるプレイルームを設けました。ゴルフや麻雀、カラオケを自宅で楽しむ場合、いずれも音が懸念事項となりますが、防音効果の高い地下室なら気兼ねなくゲストと時間を過ごせます。

実例2.グランドピアノ2台を並べたゆとりある空間の地下室

都市の暮らしを楽しむ地下室のある瀟洒な洋館の地下室

山川設計だからできた、計10坪程度のゆとりある空間の地下室です。グランドピアノを2台並べたレッスン室は、奥様のピアノ教室に利用しています。

地下室なら、ピアノの音が外に漏れる心配がありません。防音効果が高い地下室の特徴を活かした実例です。

山川設計の地下室の実例をもっと見たい方は、以下のページをご参照ください。

注文住宅の地下室に関するよくある質問

注文住宅の地下室について、よくある質問に回答していきます。

Q.地下室にエアコンは不要ですか?

地下室でもエアコンは必要です。年間を通じて気温は安定するものの、冬場は適温より低くなります。また、湿気対策として除湿機能が必要なため、エアコンの設置は欠かせません。

Q.冬場は加湿器がなくても快適に過ごせますか?

地下室は湿度が高いため、加湿器がなくても乾燥していると感じにくくなります。このため、加湿器がなくても快適に過ごせるでしょう。

Q.ドライエリアは必要ですか?

地下室において、ドライエリアは絶対に必要な空間ではありません。メリットとデメリットがあるため、あくまで選択肢の一つとして考えましょう。

Q.湿気やカビは発生しませんか?

適切に対策すれば、湿気やカビは大きな問題となりません。具体的には、前述したような建築時の壁面構成や換気制御、エアコンによる除湿で対策できます。

Q.地下室が浸水することはありませんか?

地下室は、基本的に浸水リスクが低くなるよう設計します。

たとえば山川設計の場合は、窓やエントランスからの浸水に対して、勾配や高さを考慮して設計しています。地下にドライエリアやキッチンなどの水回りを設ける場合は、排水ポンプの設置で浸水対策が可能です。

Q.地下水位が高い土地だと地下室は作れませんか?

土地の状態により、施工が推奨されないケースもあります。ただし、仮に地中から水が湧いてきた場合でも、少量であればコンクリートを打つことで、水の噴出を止められます。

まとめ

RCだからこそ実現できる注文住宅の地下室の有効活用事例

土地の広さなどさまざまな制約がある状況で、注文住宅を広々した間取りにしたい場合、地下室の選択で希望を叶えられます。しかし、地下室を設置する際は留意事項もあるため、実績があるハウスメーカーや設計事務所に相談しましょう。

地下空間の活用に豊富な実績をもつ山川設計なら、ニーズに応じた豊かな空間を提供できます。自社で実験用の地下室を建て、実際に2年間生活しながら温熱環境を調査したこともあり、独自ノウハウを基にした提案が可能です。

間取りなどの相談は無料で受け付けていますので、地下室を導入するかどうかお悩みの方は、ぜひ山川設計にご相談ください。