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RC構造は鉄筋コンクリートを利用し、高い耐久性と耐震性を誇る施工法です。優れたデザイン性と機能性から、高級住宅でも多く採用されています。
一方、「RC住宅のデメリットは?」「RC構造でどのような家が建てられる?」などの疑問をお持ちの方も多いでしょう。
本記事では、RC住宅の仕組みやメリット・デメリットを解説します。また、実際のRC住宅の設計実例もご紹介します。RC住宅に関心をお持ちの方は、ぜひ最後までお読みください。
RC(鉄筋コンクリート)住宅とは
RC住宅とは、鉄筋コンクリートを主要な構造材として用いた住宅を指します。RCは鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete)の略称で、コンクリートと鉄筋の強みを活かし、建物の強度と耐久性を高める仕組みです。
コンクリートは圧縮性に富み、鉄筋は引張力に富むというそれぞれの特徴を組み合わせることで、強度の高い構造が実現します。とくに日本のように地震が多い地域では、この耐震性が大きなメリットといえるでしょう。
RC構造は高い強度を活かして大空間や広い開口部を設計できるため、間取りやデザインの自由度が高いのも特徴です。
RC住宅と木造住宅の違い
RC構造と木造には以下のような違いがあります。
RC構造 | 木造 | |
---|---|---|
材料 | 鉄筋・コンクリート | 主に木材 |
耐震・耐火性 | 両方高く火災時の延焼の恐れも少ない | 耐震性は高いが、耐火性はRC構造に劣る |
遮音・断熱性 | 遮音性は高いが断熱性は低い | 防音性はやや低いが断熱性は高い |
建築コスト | 比較的高い | 比較的安い(ただし、こだわりを持って設計する場合は一概に安価とならない) |
工期 | 長くなる傾向がある | 短くなる傾向がある |
耐用年数 | 47年 | 22年 |
木造住宅は初期投資を抑えたい方に適しています。ただし、火災への耐性が低く、RC構造と比べて被害を受けやすいのが特徴です。また、法律で定められた耐用年数が22年とRC構造の半分程度であるため、長期的に使用する際には修繕やリフォームが必要になる可能性があります。
一方、RC構造は木造と比べて建築コストは高くなりやすいものの、耐震性・耐火性に優れ、耐用年数も長いことから、長期的な視点で見ると価値のある選択肢といえるでしょう。
RC住宅のメリット
RC構造の主なメリットは以下の5つです。
- デザインの自由度が高い
- 法定耐用年数が長く資産価値が落ちにくい
- 遮音性・防音性に優れる
- 地震に強い
- 耐火性に優れる
それぞれ詳しくみていきましょう。
デザインの自由度が高い
RC構造では目に見える場所に柱を設置せずに耐久性を維持できるため、自由な間取りデザインが可能です。柱が少ないことで、すっきりした印象も生まれます。コンクリートと鉄筋の優れた耐久性を活かし広々とした空間や大きな開口部を設けることも可能です。
たとえば、リビングに大きな吹き抜けを取り入れたり、大きな窓から自然光をたっぷり取り込んだりと、解放感あふれるデザインも実現できます。とくにフルオーダーで建築する際、さまざまなこだわりを反映できる点は大きなメリットといえるでしょう。
法定耐用年数が長く資産価値が落ちにくい
RC住宅は耐用年数が長いことで、資産価値が維持されやすいメリットもあります。国税庁が定める法定耐用年数(※)では、RC構造は47年となっており、木造の22年と比較して約2倍です。この長い耐用年数により、時間が経過しても建物の価値を保ちやすくなります。
そのため、将来の売却時にも高値が期待できます。初期コストはかかるものの、長期的な住まいの安全性と資産価値を重視する方に最適です。
※参考:国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)」
遮音性・防音性に優れる
RC構造は遮音性・防音性に優れています。コンクリートは気密性が高いため外部や室内の音を遮断でき、密集地での住宅建設にも適しています。
交通量の多い道路沿いの住宅でも静かな環境を維持できるため、都市部での生活にも最適です。さらに、楽器演奏やホームシアターなどの音響設置を導入し、趣味を楽しむこともできます。
地震に強い
鉄筋とコンクリートの特性により、RC住宅は地震に対して強い耐性を持ちます。引張強度に優れた鉄筋と圧縮に強いコンクリートの組み合わせが、建物全体の強度を大幅に向上させるからです。
大規模な地震が発生した場合でも、全壊や半壊のように深刻な被害を軽減できます。地震リスクや防災が懸念される地域でも、安心して暮らせる選択肢となるでしょう。
耐火性に優れる
RC住宅は火災に対して高い耐性を持っています。コンクリートは不燃材のため、火災時に壁が燃えて崩れにくいからです。建物の骨格が維持されることで、全焼のリスクが大幅に軽減されます。
被災後の復旧作業においても、RC住宅では構造体が残るため、リフォームによる復旧が比較的容易です。
また、コンクリートは燃焼時に有毒ガスを発生させにくい材料です。そのため、火災時の室内環境が比較的安全に保たれ、避難時間の確保や救命活動の円滑化につながります。結果として、火災時の生存率向上に大きく寄与します。
RC住宅のデメリット
RC構造には多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 価格が高い
- 地盤補強が必要な場合がある
後悔を避けるためにも、デメリットを考慮した上で検討することが必要です。
価格が高い
RC構造は鉄筋とコンクリートを多用するため、木造住宅と比較して建築費が高額になる可能性があります。さらに、高度な専門知識と技術を要し、職人による作業が中心となることも、コストを押し上げる要因の一つです。
ただし、RC住宅は法定耐用年数が47年と長く、長期的な視点ではコストパフォーマンスが高いとの見方もあります。
地盤補強が必要な場合がある
RC住宅を建てる際、地盤の状況によっては補強工事が必要になる場合があります。鉄筋とコンクリートを使用するため他の工法と比較して住宅そのものが重く、住宅の重さに地盤が耐えられない可能性があるからです。
地盤補強が必要な場合、追加費用が発生する可能性があります。建築場所によっては予想外の大きな出費となる可能性があるため、建築計画時には事前の綿密な地盤調査が必要です。
RC構造の断熱性能は高い?低い?
結論からいえば、RC構造は気密性が高い分、しっかりと対策すれば木造よりも断熱性能は高くなります。
事実、RC構造には「冬は寒い」というイメージが未だに残っています。これは、かつてRC住宅では十分な断熱対策がなされていなかったためです。
コンクリートは蓄熱性に優れる反面、熱を伝えすい性質があります。適切な断熱対策が施されていない場合、室内温度は外気温の影響を受けやすくなります。そのため、十分な断熱対策がされていないRC住宅では、冬場の寒さが際立っていたのです。
しかし、現在では「内断熱」「外断熱」といった技術が進化し、RC構造でも優れた断熱性能を実現できるようになりました。とくに外断熱工法では、建物の外側を断熱材で覆うことでコンクリート全体を保温し、室内を一定温度に保てます。
RC構造は木造と比べて気密性が高いため、適切な断熱を施すことで、むしろ断熱性能で優位に立てます。現代の施工技術を活用すれば、少なくとも断熱性能が低くなる懸念はなくなるでしょう。
RC構造の特性を活かした住宅の実例
RC構造の特性を活かした住宅の実例を3つご紹介します。
- 光と風に憩うコートハウス
- 好みのインテリアで家族や友人と楽しく過ごす家
- 高い天井の空間で心地よく暮らす住まい
ご依頼主様のご要望に沿って、山川設計が提案したものです。
光と風に憩うコートハウス
二世帯5人で暮らすご家族の住宅です。約50年経過した鉄筋コンクリート造の住まいの建て替えに際し、新居も鉄筋コンクリート造の堅牢なものを希望されたため、RC構造を得意とする山川設計にご依頼いただきました。
「日当たりがよく明るいこと」「家族がどこにいても、お互いの気配が感じられること」とのご要望に合うよう設計しました。
山川設計が提案したのは、中庭と吹抜けで家族をつなぐシンプルで美しいコートハウスです。
20坪を超える広さの中庭を設け、口の字に囲むコートハウスを設計しました。南側は平屋の廊下兼ギャラリーとし、その上をバルコニーとした低い建物にしました。
そのため50畳の吹き抜けのLDKには奥まで明るい日が差し込みます。
玄関を入ると、中庭に向かって大きく視線が伸びます。シンボルツリーにはオリーブを配置しました。応接スペースの壁はガラス張りで、中庭からの光が入ります。
どこにいても光が溢れるデザインを実現しました。
好みのインテリアで家族や友人と楽しく過ごす家
RC構造の特性である高いデザイン自由度を活かし、敷地面積の制約がある中でも、設計の工夫で希望を反映できた例をご紹介します。
都心の一等地に住み、国内外で演奏旅行の多いプロの音楽家ご夫婦の住宅です。お子様の誕生をきっかけに建て替えを決意。限られた土地を最大限活用した音楽スタジオ付きの3階建て住宅が完成しました。
ダイニング・キッチンはリビングと一体になった広々とした空間が特徴です。1階と3階の階高を調整し、2m50cmの天井高を確保しました。床には木目調のタイルを使用し、床暖房も設置しています。リビングからは都心ならではの美しい夜景も楽しめます。
斜線制限で生まれた斜めの壁を天井と共にパイン材で仕上げ、遊び心のある空間を創出しました。
地下には音楽スタジオを設けました。日々のレッスンやミニコンサートの場として活躍し、RC構造の優れた防音性が存分に活かされています。
高い天井の空間で心地よく暮らす住まい
こちらは、山川設計へご依頼いただくのが2度目となる施主様の住宅です。
「RC構造は空間の自由度が高く、長く住み継ぐことができて資産価値が高い」との想いから、再び山川設計への依頼となりました。今回の住まいも1軒目同様、都心の一等地。以前より広い敷地でのご提案事例です。
住まいのメイン空間であるLDKは、柱や間仕切り壁のない30畳の広々とした空間を実現しました。お客様所有の収納家具やソファを配置することを前提に、一部を勾配天井にしながら、可能な限り天井を高く設計しました。
奥行きの深い敷地形状を活かし、建物中央に吹き抜けの中庭を設けました。中庭をコの字型に囲む空間構成により、住まい全体に明るい光が行き渡るようにしています。
さらに、明るい日差しが降り注ぐバルコニーも設置。必ずしも必要とはいえない空間をあえて作り出すことで、ゆとりある住まいを実現しました。
まとめ
RC構造は耐久性や耐震性に優れ、自由度の高い設計が可能な施工法です。一方で、建築コストや結露、地盤補強が必要なケースなど、事前に検討すべきポイントもいくつかあります。
山川設計では、RC構造の特性をしっかりと活かしながら、お客さま一人ひとりのご要望に応じた住宅設計をご提案します。実例でもご紹介したように、限られた敷地条件でも工夫を凝らし、光あふれる空間や快適な住まいの実現が可能です。
RC住宅を検討中の方は、ぜひ山川設計にご相談ください。豊富な実績と専門知識をもとに、お客さまの理想の住まいづくりをサポートいたします。