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壁式構造とは、建物全体を壁で支える構造のことです。柱は用いず、壁と床だけで構成されます。
本記事では、壁式構造の特徴について詳しく解説しています。ラーメン構造との違いやリノベーションの実例も紹介しますので、理想の家づくりのために建築の基礎知識を収集している方は参考にしてください。
壁式構造とは

壁式構造とは、建物全体を壁や床などで支える構造のことです。RC(鉄筋コンクリート)住宅の構造の一つです。
5階建て以下の中低層の建物であれば、壁式構造を採用することで耐震性の強さが発揮されます。地震が発生した際、壁・天井・床のすべてで揺れを受けることで、力が分散されるためです。
一方、建物全体のしなやかさ(柔軟に変形する力)は低いため、揺れの影響が大きくなる高層の建物には適用できません。
内装は、柱が見当たらず、梁が目立ちにくくなっています。壁式構造は、開放感のある空間を演出しやすい点が特徴の一つです。
壁式構造とラーメン構造の違い

壁式構造と同様に現代の住宅建築によく用いられる建築構造として、ラーメン構造があります。壁式構造とラーメン構造の違いは以下のとおりです。
壁式構造 | ラーメン構造 | |
---|---|---|
建物を支える構成 | 床・天井・壁4枚 | 柱と梁 |
高さ | 5階以下 | 制限なし |
耐震性 | 剛性が強い | 靭性が高い |
遮音・断熱性 | 高い | 壁式構造と比較すると低い |
コスト | ラーメン構造と比較すると低い | 高い |
ラーメン構造は柱や梁で建物を支える構造です。柱は上下で同じ位置に設置する必要があり、壁式構造と比べて設計の自由度は低めです。
ただし、ラーメン構造は戸建て住宅ではほぼ見られることはなく、おもにオフィスやマンションなどの高層ビルで採用されます。ラーメン構造で建築した建物の主な用途を踏まえると、柱の発生や設計の自由度の低さは深刻な懸念事項とはならないでしょう。
また、壁式構造には基本階高(床の上面から直上階の床の上面までの高さ)が3.5mまでの制約があり、天井高が4m必要になるようなオフィスではラーメン構造が採用されます。
耐震においては、壁式構造は剛性が高いため、建物が変形しにくい特徴があります。一方、ラーメン構造は靭性が高く、地震の揺れに対して自らも変形し、左右への大きな動きにも耐えられるのが特徴です。そのため、地震発生時の揺れが比較的小さい中低層の建物には壁式構造が、揺れが比較的大きい高層の建物にはラーメン構造が適しています。
参考:国土交通省「壁式鉄筋コンクリート造の建築物又は建築物の構造部分の構造方法に関する 安全上必要な技術的基準を定める件」
壁式構造の特徴

壁式構造について理解を深めるうえで、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 耐震性に優れている
- 防音性が高い
- 開放感のある空間が作れる
- 木造や軽量鉄骨造よりも間取り変更はしやすい
それぞれについて詳しく解説します。
耐震性に優れている
壁式構造は、耐震性に優れているのが大きな特徴と言えます。柱や梁などの点でなく、壁や床などの面で建物を支えているためです。地震で建物が揺れても、天井と床と壁の6つの方向へ力が分散されるので、負担が一点に集中しません。
また、耐力壁を使用している点も、耐震性の高さに寄与しています。耐力壁とは、建物の変形や倒壊を防ぐための壁です。見た目は非耐力壁と大差ありませんが、含有する鉄筋の量や壁の厚みが異なります。
ただし、どれだけ強固な建物であっても、地盤が不安定だと傾きや崩壊のリスクは避けられません。
家を建てる際は安心できる業者に地盤調査を依頼し、より安心して暮らせるマイホームにしましょう。
防音性が高い
壁式構造は、防音性が高いことも特徴の一つとして挙げられます。厚みのある耐力壁が使われているためです。
壁式構造の家であれば、交通量が多い道沿いに建てても、家の中まで音が入りにくくなります。外の音を気にせず静かに暮らせるのが魅力です。
また、家の中の音が外に漏れることも防げるため、隣家との騒音トラブルも避けやすくなります。音楽鑑賞や楽器演奏も気軽に楽しめるでしょう。
開放感のある空間が作れる
壁式構造は柱や梁の出っ張りがないので天井がフラットになり、スッキリとした空間を演出できます。柱がないことで視界が遮られず、空間を広く見せることも可能です。
開放感のある空間は日々の暮らしにゆとりをもたらし、心身ともにリラックスできるでしょう。
また、部屋の壁に凹凸がないので、家具を配置する際の自由度も高いです。壁際や部屋の角などにも家具を配置しやすくなります。
木造や軽量鉄骨造よりも間取り変更はしやすい
壁式構造は、ラーメン構造と比較すると建築後の間取り変更が難しくなります。柱と梁で建物を支えるラーメン構造に対し、壁式構造は壁で建物を支えており、除去できる壁に制限があるためです。
一方で、木造や軽量鉄骨造よりは構造壁が少なく、間取り変更がしやすいといえます。
構造壁を撤去するような間取り変更はできませんが、そこまで懸念しなくてもよいでしょう。一般住宅の場合は、オフィスや貸店舗のように中身をガラッと変えるような間取り変更は少ないためです。
壁式構造でも構造壁さえ撤去しなければ間取り変更ができるケースはあるため、信頼できる業者に相談してみてはいかがでしょうか。
壁式構造のリフォーム・リノベーションはどのように行う?

壁式構造のリフォーム・リノベーションは、ラーメン構造と比べて難しいとされています。
ただし、構造壁の配置をそのままとして、他の部分を変更することは可能です。具体的には、建物を支える役割をはたしていない薄い壁や構造壁以外の壁であれば、撤去して間取りを変更できます。
また、壁式構造では柱を使用していないので、柱の位置を気にせずリフォームやイノベーションを行える利点があります。
以下は、山川設計が担当したRC(鉄筋コンクリート)住宅のリノベーション実例です。


壁式構造であっても、やり方次第ではこのようにガラッと印象を変えられます。
まとめ

壁式構造は、建物全体を壁で支える構造です。開放感のある空間が作りやすく、耐震性や防音性にも優れています。
ただし、設計の自由度が高いゆえに、住宅の仕上がりは施工会社の技術力に左右されやすいといえます。
山川設計は、一般的な業者には対応が難しいといわれるRC(鉄筋コンクリート)住宅の設計において、卓出した実績を誇ります。安心して長く住み続けられる住宅を建てたいとお考えの方は、ぜひご相談ください。